第2章-3.六十干支のサイクルと還暦の関係

十干は空間、十二支は時間の流れを表す—その両者が重なり生まれる『干支(干支)』は、全部で60通りあります。

この60通りの干支は、まるで時計のように一定の法則でめぐり、60年をひと回りとする『干支の循環』を形成します。

60歳で迎える『還暦』とは、単なる誕生日ではなく、時間が一周して元に戻るという深い意味を持つ人生の転換期なのです。

この章では、干支の組み合わせがどうして60種類になるのかという数学的ロジックから、人生の流れを掴む実践的な計画術までを解説していきます。

「時間は戻らない」と思い込んでいた私たちに『時間は循環する』という新しい視点をもたらしてくれるのが干支の循環です。

その構造と意味を深く理解することで、人生のリズムを味方にする生き方がみえてくるでしょう。

十干×十二支=60干支

干支は60の周期構造

十干と十二支は、性質の異なる2つのサイクルです。

この2つを順番に掛け合わせていくと、60通りの干支(かんし)が生まれます。

この60の組み合わせこそが、東洋の時間体系の基本となる『干支暦(かんしれき)』の正体です。

10と12の周期のズレが60という調和を生む

十干は『甲乙丙丁戊己庚辛壬癸』の10個の記号で構成され、陰陽(甲=陽/乙=陰)×五行(木火土金水)=10種類の空間エネルギーを表します。

一方の十二支は『子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥』の12個で、木星の公転周期に基づいた時間のサイクルです。

この10と12という周期の違う二つ要素を並列に一つずつ進めていくと、初めて両方が元に戻るのは60回目になります。

つまり干支とは…

十干(10周期)×十二支(12周期)=60周期の組み合わせ

という数学的な仕組みによって成り立っているのです。

十干と十二支の組み合わせ

干支は、十干と十二支を以下のように同時進行で組み合わせいきます。

干支番号干支読み
1甲子こうぼくのねすい
2乙丑おつぼくのうしど
3丙寅へいかのとらもく
4丁卯ていかのうもく
5戊辰ぼどのたつど
6己巳きどのみび
7庚午こうきんのうまか
8辛未しんきんのひつじど
9壬申じんすいのさるきん
10癸酉きすいのとりきん
11甲戌こうきんのいぬど
12乙亥おつぼくいすい
13丙子へいかのねすい
14丁丑ていかのうしど
15戊寅ぼどのとらもく
16己卯きどのうもく
17庚辰こうきんのたつど
18辛巳しんきんのみび
19壬午じんすいのうまか
20癸未きすいのひつじど
21甲申こうぼくのさるきん
22乙酉おつぼくのとりきん
23丙戌へいかのいぬど
24丁亥ていかのいすい
25戊子どぼのねすい
26己丑きどのうしど
27庚寅こうきんのとらもく
28辛卯しんきんのうもく
29壬辰じんすいのたつど
30癸巳きすいのみび
31甲午こうぼくのうまか
32乙未おつぼくひつじど
33丙申へいかのさるきん
34丁酉ていかのとりきん
35戊戌ぼどのいぬど
36己亥きどのいすい
37壬子じんすいのねすい
38癸丑きすいのうしど
39甲寅こうぼくのとらもく
40乙卯おつぼくのうもく

61番目になるとまた『甲子』に戻り、以後はこの60通りが永遠に繰り返されていく仕組みです。

陰陽五行(算命学)では、この六十干支を人間の才能資質や人生のタイミング(年運/大運など)を判断する指標としても用います。

干支は60年で一周する時間サイクルの基本単位

このように、十干と十二支は、それぞれ独自の意味を記号でありながら、組み合わせることで60という調和と循環にリズムを生み出します。

この六十干支こそが、年、月、日を導く”暦の単位”であり、自然界と人間の運命をシンクロさせるコンパスとなるのです。

還暦は干支が一周する転換期

還暦とは人生再起動のタイミング

『還暦』とは、単なる60歳の誕生日ではありません。

東洋の暦においては、60年で干支のサイクルが一巡し、生まれた年と同じ干支に”還る”特別な節目です。

これは人生の一区切りであり、新たな時間軸に生まれ変わる転換期です。

還暦=本卦還り

十干×十二支で構成される干支は、60通りの組み合わせを持ち、それが毎年一つずつ進んでいきます。

このため、自分が生まれた年の干支と再び同じ干支が巡ってくるのは60年後。

この瞬間を『本卦還り(ほんけがえり)』とも呼びます。

これは『再誕生』や『新たな運命のサイクルに入る』と捉えられ、人生の再スタートと象徴するタイミングとされてきました。

なぜ赤いちゃんちゃんこを着るのか?

還暦祝いでよく見かける『赤いちゃんちゃんこ』

これには魔除けと再出発の意味が込められています。

赤は陽の色であり、生命力・再生・守護を象徴します。

干支が元に戻る=人生の一巡目が完了し、魂が生まれた原点に戻るという思想が背景にあるため、『生まれ直し』の象徴として赤子に戻る儀式が行われてきました。

人生の後半戦をより自分らしく生きる

干支が一巡して自分の生まれた干支に還る還暦は、東洋歴における時間の大きな節目です。

人生の完成ではなく、『次のステージ』へのはじまりの合図。

この節目を意識することで、人生の後半戦をより自分らしく、意図的に歩むことができます。

干支という時のリズムを感じ取りながら、還暦=人生の再スタートとして活かしていきましょう!