『正しい』『間違い』といった二元論では捉えきれない複雑な現実を、どう読み解くか…?
その鍵となるのが“球体思考“です。
この思考方法は、物事を一方向からだけではなく、まるで球体をグルリと回しながら多方面から眺めるように、多角的に本質を捉えるアプローチ方法です。
陰陽論が二極のバランスを平面的に捉える理論とすれば、球体思考はそのバランスを立体的に捉える方法と言えるでしょう。
この章では、『多面』『反転』『統合』という発想を通じて、球体思考を日常に落とし込むことで、見え方がどう変わるのかを探求していきましょう。
白か黒、正しいか間違っているかではなく、『どの面を見るか?』で捉え方が変わることを実感して頂ければと思います。
球体思考の定義

球体思考とは、物事を正面・側面・裏面・上面・下面の区別なく、”球”のようにグルリと回しながら眺め、多方面から本質をつかる思考方法です。
陰陽五行が「昼があれば夜があり…木が燃えて火になり…」と循環と多面性で世界を説明するのと同様に、私たちの現実も一方向からだけでは輪郭が歪んでしまいます。
視点を変えるたびに新しい因果(原因と結果)が浮かび上がり、その重なりを把握してはじめてバランスの良い選択が可能になる…
これが球体思考が求められる理由と言えるでしょう。
たとえば「転職したい」というテーマを点で捉えると、『辞めるか』『残るか』の二択に見えます。
ところが…
1.市場動向という外側
2.家計や家族感情という内側
3.自分の使命感という縦軸を加えて
球体的に考えてみると、「今は学習フェーズを続けつつ副業で試す」「社内環境を変える」と言った中間の解決方法が立体的に現れます。
見方を増やした途端に、単純な善悪や成功失敗のラベルが剥がれ落ち、より自分らしい答えが浮かび上がるわけです。
つまり、球体思考とは、陰陽五行の多層構造を現代の意思決定に翻訳するレンズと言えるでしょう。
360度に視野を広げることで、”良い悪い”の二元論から解放され、変化の激しい時代でもぶれない判断軸を手に入れることができる…それが球体思考の本質です。
一事を多面で捉えるメリット

一つの出来事を“良い””悪い”とすぐに判断してしまうのは早計です。
今、思い込んでいる視点をグルリと回してみると、評価はあっさりと反転し、むしろ多面的に見たほうが判断ミスを防げることに気づくはずです。
そもそも価値とは、固定ではなく相対です。
陰陽が表裏一体で揺れ動き続けるように、事象も立場・時間帯・組み合わせしだいでプラスにもマイナスにも揺れ動きます。
これらを踏まえると、”良い””悪い”絶対値ではなく座標のようなものと捉えることができます。
球体思考で角度を変えるたびに、座標は滑らかに移動し、単色だった評価がグラデーションに変わっていくのです。
たとえば、突然の左遷は表面上『不運』かもしれません。
ですが、転勤や異動でルーティンを手放したからこそ、新しいスキルが身につき、思わぬ仲間と出会い、数年後には転職先で花開くケースは珍しくありません。
逆に『大抜擢』が慢心を招き、準備不足のまま炎上…という例も山ほどあるもの事実。
現象自体に善悪の札は貼られておらず、貼るのは常にあなた自身のレンズなのです。
だからこそ、「これは吉か凶か」と即断する前に、少なくとももう一回、できれば360度視点をずらして、グルリと目の前の事象を見直してみる。
そこで見えた副産物やリスク、隠れた恩恵まで加味して判断すれば、結果的に行動制度もメンタルの安定度も大きく上がるでしょう。
多面で捉えるクセを身につけて、陰陽五行を現実に役立てる一歩を踏み出しましょう。
球体思考を鍛える3ステップ

球体思考は『視点を増やしてから収束する』ことで立体的な判断をすることができる思考方法です。
一つの例として、ここでは『反転』『拡散』『統合』という三段階をワンセットで回し、思考を球体に膨らませる方法をお伝えしましょう。
STEP1:反転‐評価軸をひっくり返す
まず自分が抱いた評価を真逆に置き換えてみましょう。
『メリットが多い案件』なら『リスクの塊』と断定し、『時間のムダだ』と感じた雑用を『学びの宝庫』と言い換えてみる。
ここで重要なのは、”正解探し”ではなく、“視点の反射神経”を鍛えることです。
ものの見方を180度転換すると、感情と論理が一度リセットされ、固定観念が外れやすくなります。
STEP2:拡散‐視点を多軸に広げる
反転で揺さぶった評価を起点に、時系列・関係者・場所・資源など複数の軸へ疑問点を広げてみましょう。
時間軸:半年後・5年後にどう変わるか?
人間関係軸:上司/顧客/チームメンバーにどんな影響がでるか?
資源軸:金・情報・スキルをどれだけ動かすか?
感情軸:自分と周囲のモチベーションは上下するか?
※メモ用紙やホワイトボードに書き散らすと、関係のない点が線で結ばれ始め、思考が一気に立体化します。
STEP3:統合‐多面的データを束ねる
拡散フェーズで出そろった材料を『実効性×インパクト』の2軸マトリックスなどで整理して、最適な道筋を描きましょう。
余計な枝はをそぎ落とし、『誰が・いつまでに・何をするか?』を1枚の紙に収めます。
ここではじめて”決めきる”ことが球体思考のゴールとなります。
反転‐『キャリアの後退』ではなく『新領域の経験値獲得』と定義し直す
拡散‐新部署の業務内容、市場価値、キーパーソン、必要資格、想定リストの5軸で洗い出す
統合‐『半年で専門知識を吸収→1年以内に社内外へ展開→2年目に昇進or転職』というロードマップを作成し翌週から行動開始
この3ステップをメールの草案づくりや会議のアジェンダ決めなど、日常の”小さな決断”にも使うと、反射的に多面フレームで考える習慣が身につきます。
回数を重ねるほど評価軸は単線から球体へ進化し、急な出来事に対しても、迷わず最適解を導き出せる思考力が養われるでしょう。
1分間“球体ジャーナル”で思考を丸くする

たった1分で、思考を立体的に整える習慣がつくれるのが『球体ジャーナル』です。
これは、多面的な視点を養うための超シンプルな実践法であり、日常の意思決定や感情の整理に大きな効果を発揮します。
球体思考とは、『一つの事実を複数の視点で捉える』ことで、良し悪しの二元論を超えた本質的な判断力を育てるアプローチです。
ただし、多面から物事を見る力は、一朝一夕では身につきません。
そこで役立つのが、“毎日の書く習慣“です。
文字にして書くことで、思考の角度が固定化されず、「自分今どこから見ているか?」を客観視することができるのでオススメの方法です。
このジャーナル(日記)は、1分3項目というミニマム設計で、日々の暮らしに無理なく組み込めるのが最大のメリットです。
ノートやスマホのメモ機能を使って、以下のフォーマットを1分で埋める練習をしてみましょう。
1.今日の出来事・悩み・テーマ(例:上司に指摘されてモヤモヤ)
2.反転思考(例:自分が部下だったら同じ注意をしたかもしれない)
3.別方向から意味づけ(例:この経験は「怒られ耐性」を鍛える訓練かも)
このように、一つの事象に対して反射的に3つの面を探ることで、思考や柔らかくなり、感情の滞りがほぐれていきます。
また、繰り返すことで『どの方向からでも考えられる』という自信が生まれ、人生の選択肢が広がっていることに気がつくはずです。
球体思考は一度身につければ、仕事・人間関係・人生設計のすべてに活かすことのできる『脳の筋トレ』です。
そのための最小単位が、1日1分の球体ジャーナルです。
筋トレはキツイですが継続することで、あなたの思考の角を取り除くことができます。
思考を丸くすることで、これまで見えなかった突破口が、自然と目の前に現れてくるのです。