第3章:十干十二支でわかる精神と現実のバランス

私たちが生まれた日や時間には、それぞれ意味がある—そんな考え方が陰陽五行にはあります。

その中でも、とくに重要とされているのが『十干(じっかん)』と『十二支(じゅうにし)』という2つの要素です。

この2つを組み合わせたものが『干支(かんし)』と呼ばれ、ただの”動物占い”ではなく、実は精神や現実のバランスを読み解くための本格的なツールなのです。

では、十干と十二支は、それぞれ何を表しているのでしょうか?

ざっくりと整理すると…

十干=精神や意識の傾向(空間の世界)
十二支=現実や時間のリズム(時間の世界)

というように分けて考えることができます。

十干はその人の『心の傾向』『どんなふうに考え、動こうとするか』とい内面的な特徴を、十二支は『どんな時期に強みができるか』『人生でどんな流れを経験しやすいか』といった時間的・社会的な現象を示してくれます。

また、陰陽五行をベースとした算命学では、この十干と十二支の組み合わせからなる干支をもとにして、その人が持って生まれた資質や人生の流れ、起こりやすい出来事などを読み解いていきます。

たとえば、自分の『日干支(にっかんし)』と知れば、心の核となる気質がみえてきます。

さらに『年干支(ねんかんし)』や『月干支(げっかんし)』などを使えば、家族運・仕事運・人生の時期ごとのテーマまでも考察することができるのです。

ここでは、そんな十干と十二支の基礎を、初心者の方でもわかるように丁寧に解説していきます。

十干、十二支を知れば、自分や他人の特性を理解しやすくなり、日々の行動や人間関係のヒントになるずです。

次の章では、まず精神面を読み解く鍵となる、十干から見ていきましょう。

十干:精神世界をあらわす10のタイプ

十干は古代中国の思想において『空間世界』を表す10種類の記号です。

これはただのシンボルではなく、自然界の現象や人間の精神と対応しており、私たちの内面の傾向や行動パターンを読み解くための鍵として使われます。

十干は、陰陽五行の基本である『五行(木・火・土・金・水)』に、それぞれ『陰(いん)』と『陽(よう)』の性質をかけ合わせて分類されています。

つまり、5×2=10のエネルギータイプがあるというわけです。

この分類によって、十干は以下のように10種類の個性を持つ記号として整理されています。

木性(守備本能):甲と乙

甲(こうぼく・陽)

・大きな樹木や巨木のような存在。

・自立心が強く、正直でまっすぐ。

・一本気で、頑固な面もあります。

・周りに流されずに、自分の軸を大切にする人です。

乙(おつぼく・陰)

・草木やツタのようにしなやかな存在。

・協調性があり、柔軟で、人間関係の中で力を発揮します。

・環境に応じて成長する、順応力の高い性格。

火性(伝達本能):丙と丁

丙(へいか・陽)

・太陽のように明るく、エネルギッシュなタイプ。

・おおらかで、裏表がなく、どこにいても目立つ存在感があります。

・大衆に向けた表現力や影響力が強いのが特徴。

丁(ていか・陰)

・ろうそくや焚き火のような繊細な炎。

・思いやりがあり、優しく、芸術的な感性に恵まれています。

・大人数よりも、少人数や1対1の関係に安心感を持つタイプです。

土性(引力本能):戊と己

戊(ぼど・陽)

・山のように大きく、安定感のある人。

・周囲を包み込むような優しさがあり、困っている人を放っておけないタイプ。

・大きなことを成し遂げる包容力と器の大きさがある。

己(きど・陰)

・畑のように地に足がついた存在。

・地道な努力を積み重ねるのが得意で、献身的で真面目。

・身近な人や小さな範囲に丁寧な愛情を注ぐタイプ。

金性(攻撃本能):庚と辛

庚(こうきん・陽)

・鋼や刀のように鋭く、行動力の塊。

・正直で裏表がなく、負けず嫌い。

・困難な環境でこそ輝くタフさがある。

・競争やチャレンジの場で力を発揮する。

辛(しんきん・陰)

・宝石のように洗練され、品のある性質。

・プライドと責任感が強く、組織や集団の中で成果を出す。

・うちに秘めた意志の強さがあり、評価されることで輝く。

水性(習得本能):壬と癸

壬(じんすい・陽)

・大海のようにスケールが大きく、自由な発想の持ち主。

・好奇心旺盛で、さまざまな経験を通じて成長していきます。

・どこまでも広がるような思考の柔軟さが魅力。

癸(きすい・陰)

・小川のように澄んだ知性を持ち、学問に向くタイプ。

・伝統を大切にし、コツコツと知識を蓄えていきます。

・純粋で染まりやすい一面もある。


こうしてみると、十干はただの『記号』ではなく、人の精神や行動の型を自然現象になぞられて表現したものであることがわかると思います。

なかでも特に重要なのが、自分の『日干(にっかん)』です。

これは、宿命表の中でもその人の『心の核』を表す部分で、自分の根本的な価値観や精神的なエネルギーのあり方を知る手がかりとなります。

次の章では、十干と対をなす『十二支』について見ていきましょう。

十二支:時間と現実を表す12種類の動物

十干が『精神のかたち』や『内面の傾向』をあらわすのに対し、十二支(じゅうにし)は『時間の流れ』や『現実の環境』を表現する記号といえます。

つまり、精神がどのように『現実の場』に現れていくかを知るためには、この十二支の存在が欠かせないのです。

時間・季節・方位を司る記号

十二支と聞くと、多くの人は『干支(えと)の動物たち』を思い浮かべるかもしれません。

子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類の動物です。

でも実は、これらの動物は単なるシンボル的な意味合いしかなく、本来の十二支は『時間』『季節』『方位』と深く関わっている東洋思想の言語なのです。

たとえば…

・一日の時間帯を12等分して割当
・四季や気候の移り変わりを五行に対応させ
・東西南北の方位で意味を持たせて配置する

こういった方法で、自然界のサイクルをあらわすための体系として使われてきました。

五行と季節・方位の対応関係

十二支もまた、十干と同様に五行(木火土金水)×陰陽に分類されます。

それぞれの季節や方位と関係しており、以下のような分類になります。

・木性(春・東):寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)
・火性(夏・南):巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)
・金性(秋・西):申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)
・水性(冬・北):亥(い)、子(ね)、丑(うし)
・土性(季節の変わり目・中央):土用(どよう)に割り当てられ、各季節の移行期に18日間づつ配置される。

たとえば、土用の丑の日は、上記の考え方に基づいて決められたものになります。

十二支と時間の関係

十二支は時間ともリンクしています。

1日24時間を12等分し、それぞれの時間帯に1つずつの十二支が割り当てられます。

子(ね)=23時〜1時
丑(うし)=1時〜3時
寅(とら)=3時〜5時
卯(う)=5時〜7時
辰(たつ)=7時〜9時
巳(み)=9時〜11時
午(うま)=11時〜13時
未(ひつじ)=13時〜15時
申(さる)=15時〜17時
酉(とり)=17時〜19時
戌(いぬ)=19時〜21時
亥(い)=21時〜23時

…というように、2時間ごとに1つの干支が巡る仕組みとなっています。

これを炎上に並べると、まるで時計の文字盤のような図になります。

そのため、色々な出来事が「いつ起こりやすいか?」という判断にも十二支は使われるようになりました。

次の章では、いよいよこの十干と十二支が組み合わさって生まれる『干支(かんし)』について見ていきましょう。

ここでは精神と現実が出会い、60種類のパターンが生まれる仕組みを解説していきます。

干支:精神と現実が出会う60通りの組み合わせ

これまで紹介してきた、『十干』と『十二支』は、それぞれの精神と現実の流れを表す記号でした。

この2つが組み合わさることで生まれるのが、私たちにも馴染みにある『干支(かんし)』です。

ただし、ここでいう干支は、単なる動物占い的なものではなく、十干+十二支の60通りの組み合わせによって成り立つ、精神と現実が出会う記号です。

60種類の干支と還暦の関係

十干は10種類。十二支は12種類。

これらを順番に組み合わせていくと、最小公倍数である60通りの干支ができます。

六十干支一覧

1番干支:甲子(こうぼくのね)
2番干支:乙丑(おつぼくのうし)
3番干支:丙寅(へいかのとら)
4番干支:丁卯(ていかのう)
5番干支:戊辰(ぼどのたつ)
6番干支:己巳(きどのみ)
7番干支:庚午(こうきんのうま)
8番干支:辛未(しんきんのひつじ)
9番干支:壬申(じんすいのさる)
10番干支:癸酉(きすいのとり)
11番干支:甲戌(こうぼくのいぬ)
12番干支:乙亥(おつぼくのい)
13番干支:丙子(へいかのね)
14番干支:丁丑(ていかのうし)
15番干支:戊寅(ぼどのとら)
16番干支:己卯(きどのう)
17番干支:庚辰(こうきんのたつ
18番干支:辛巳(しんきんのみ)
19番干支:壬午(じんすいのうま)
20番干支:癸未(きすいのひつじ)
21番干支:甲申(こうぼくのさる)
22番干支:乙酉(おつぼくのとり)
23番干支:丙戌(へいかのいぬ)
24番干支:丁亥(ていかのい)
25番干支:戊子(ぼどのね)
26番干支:己丑(きどのうし)
27番干支:庚寅(こうきんのとら
28番干支:辛卯(しんきんのう)
29番干支:壬辰(じんすいのたつ)
30番干支:癸巳(きすいのみ)
31番干支:甲午(こうぼくのうま)
32番干支:乙未(おつぼくのひつじ)
33番干支:丙申(へいかのさる)
34番干支:丁酉(ていかのとり)
35番干支:戊戌(ぼどのいぬ)
36番干支:己亥(きどのい)
37番干支:庚子(こうきんのね)
38番干支:辛丑(しんきんのうし)
39番干支:壬寅(じんすいのとら)
40番干支:癸卯(きすいのう)
41番干支:甲辰(こうぼくのたつ)
42番干支:乙巳(おつぼくのみ)
43番干支:丙午(へいかのうま)
44番干支:丁未(ていかのひつじ)
45番干支:戊申(ぼどのさる)
46番干支:己酉(きどのとり)
47番干支:庚戌(こうきんのいぬ)
48番干支:辛亥(しんきんのい)
49番干支:壬子(じんすいのね)
50番干支:癸丑(きすいのうし)
51番干支:甲寅(こうぼくのとら)
52番干支:乙卯(おつぼくのう)
53番干支:丙辰(へいかのたつ)
54番干支:丁巳(ていかのみ)
55番干支:戊午(ぼどのうま)
56番干支:己未(きどのひつじ)
57番干支:庚申(こうきんのさる)
58番干支:辛酉(しんきんのとり)
59番干支:壬戌(じんすいのいぬ)
60番干支:癸亥(きすいのい)

この60種類を一巡するのが『60年のサイクル』で、人生の一区切りとされる『還暦』もここから来ているとされています。

つまり、干支は60年で一周する人生のリズムを表していると言えるでしょう。

年・月・日で違う意味を持つ干支

干支は、生まれた年・月・日によって呼び名が変わり、意味合いが変わってきます。

年干支(ねんかんし):社会的な役割(行動)や仕事運を表す
月干支(げっかんし):社会的な立場(位置)に影響を与える
日干支(にっかんし):その人の本質や心の核を示す最も重要な要素

なかでも日干支は、ご自身を深く知る手がかりとなります。

十干が精神や心。十二支が現実や環境。

この掛け算が『自分らしさ』の原型になると言えるでしょう。

干支を”絵”に変換して読み込む

干支は文字だけではなく、自然のイメージといっしょに理解するとぐっと親しみやすくなります。

たとえば、『乙未(おつぼくのひつじ)』

乙(おつぼく)は、草やツルのような柔らかい植物
未(ひつじ)は、夏の終わりの乾いた土

この2つを合体させて絵にすると—『乾いた土の上に生える草』のイメージになります

この絵からわかることは、『水分(=潤い・助け)』が必要だということです。

つまり、乙未の人は、周囲の助けや環境整備(特に水に関するもの)があってこそ力を発揮するタイプ。というように読み取ることができるのです。

その他の干支のイメージは下記の通りです。

干支のイメージ一覧

1番干支:甲子→冬の水辺に立っている木
2番干支:乙丑→冷たい土に生えている草
3番干支:丙寅→春の穏やかな太陽
4番干支:丁卯→春の草が燃える灯火
5番干支:戊辰→山間に水が流れる山岳
6番干支:己巳→高地の乾燥した畑
7番干支:庚午→炉で熱せられた鉱石
8番干支:辛未→乾燥した土壌に塗れた宝玉
9番干支:壬申→水源のある大きな湖
10番干支:癸酉→山中の石の間から出た小川
11番干支:甲戌→秋の山岳に立つ樹木
12番干支:乙亥→冬の水の上に浮かぶ草
13番干支:丙子→冬の海にきらめく太陽
14番干支:丁丑→冬の土の上で燃える灯火
15番干支:戊寅→樹木が茂る連山
16番干支:己卯→地中に作物の根が残る畑
17番干支:庚辰→柔らかい大地にある岩石
18番干支:辛巳→強烈な太陽に照らされる宝石
19番干支:壬午→南国の楽園のような海
20番干支:癸未→乾燥し大地に降り注ぐ雨
21番干支:甲申→岩石の上に立つ樹木
22番干支:乙酉→剣山に刺された草花
23番干支:丙戌→山岳に沈んでいいく夕日
24番干支:丁亥→水面に浮かんだ灯火
25番干支:戊子→豊かな水源を内在した冬山
26番干支:己丑→雪解けで肥沃な田土
27番干支:庚寅→切り株の上に乗った岩石
28番干支:辛卯→草花が芽吹く春の小石
29番干支:壬辰→養分を含む水が流れ込む海
30番干支:癸巳→暑い太陽に照らされる小川
31番干支:甲午→熱気で乾いた樹木
32番干支:乙未→乾いた土の上に生える草
33番干支:丙申→美しい景観の夕日
34番干支:丁酉→玉砂利の上で燃える灯火
35番干支:戊戌→雄大で外見が素晴らしい山岳
36番干支:己亥→水気でぬかるんだやらかい土
37番干支:庚子→水に沈む岩石
38番干支:辛丑→湿った土に埋もれた宝石
39番干支:壬寅→春の雪解けの水
40番干支:癸卯→草木に降る優しい雨
41番干支:甲辰→恵まれた土壌に立つ樹木
42番干支:乙巳→夏に咲き誇る草花
43番干支:丙午→強烈な真夏の太陽
44番干支:丁未→乾燥した土の上で燃える焚き火
45番干支:戊申→強固な岩石
46番干支:己酉→小石が混ざっている田園
47番干支:庚戌→乾いた土の上の岩石
48番干支:辛亥→湖に沈もうとする宝石
49番干支:壬子→荒れ狂う海
50番干支:癸丑→暗い溝に流れる小川
51番干支:甲寅→果実が実り完成された樹木
52番干支:乙卯→成長著しく繁茂している草花
53番干支:丙辰→昇っている太陽
54番干支:丁巳→夏に燃え盛る炎
55番干支:戊午→熱いマグマを内在した山岳
56番干支:己未→作物が十分に育つ田園
57番干支:庚申→堅くて重い大きな岩石
58番干支:辛酉→大切に飾られている宝石
59番干支:壬戌→雨後の晴れ上がった海
60番干支:癸亥→冬の豪雨

干支は、十干と十二支の性質を組み合わせることで、より立体的に『その人らしさ』や『人生の流れ』が見えてきます。

次の章では、この干支の知識を通して、ご自身のリズムをどう捉えていくのかをまとめていきます。

十干・十二支のまとめ

十干と十二支は、それぞれ『精神』と『現実』の側面をあらわす東洋思想の言語です。

この2つをあわせた干支を通じて、私たちは目に見えない心の性質と、目に見える環境やタイミングの両方を読み解くことができます。

たとえば、十干では—あなたの行動のベースとなる『本能』や『精神傾向』がわかります。

そして、十二支では—時間・季節・方位といった『現実世界の動き方』や『流れとの付き合い方』が見えてきます。

この2つのバランスをよく知ることで、自分の中にある”ズレ”や”得意・不得意”を理解しやすくなり、日常の選択にも柔軟さが生まれてくるでしょう。

また、干支は単なる占いではなく、自己理解を深めるツールということもできます。

60種類の干支を通じて、「自分はどんな才能資質を持ち、どんな環境に向いているのか?」を考えることができます。

そしてその結果、『どうすればムリのない形で力を発揮することができるのか?』のヒントが得られるのです。

とはいえ、難しいことをいきなり覚える必要はありません。

まずは、ご自身の日干支をメモして、日常で意識して過ごすことからはじめてみてはいかがでしょうか?

十干十二支は、決して特別な人だけのものではなく、誰もが日々をよりスムーズに、そして自分らしく生きるための道具です。

まずはご自身のリズムを知ること。

そこから、人生の景色が少しずつ変わり始めていきます。